萱ウキの製作 1 [萱ウキの作り方]
萱とは、何?
カヤは、「茅」や「萱」と書かれます。茅はススキの別名で、「萱」はヨシやチガヤなど、イネ科植物の総称として用いられます。ヘラウキの材料となるのは、オギ(荻)とススキ(薄)です。
ススキは株になっており、その株が大きく育つには10年くらい掛かるようです。オギは水際に多く自生し、地下茎で増え、並んで一本立ちしています。
ススキもオギも、何種類かあり、中綿が形成されない、内部が空になっているものがあります。この様な物は、弱く使えないことが多いようです。
高速道路の土手に生えるススキ、手前はオギの群落
ホームグラウンド、風越池の傍らに生えているオギ
ご近所の萱
萱ウキを取り上げるにあたり、名古屋市の北東から小牧方面の萱を見て回りました。狙い目は、宅地などの造成工事が済んで、ある程度の時間が経過しているところです。
ススキは細くて使えないものが多かったのですが、オギは使えそうなものも見つかりました。採取するには季節外れですが、萱は腐りにくいため、サンプルくらいは採取することができました。
これは秋の七草の一つ「藤袴」、萱の採取に行ったとき、庄内川の堤防に咲いていた。
ススキやオギをネットで調べると、南国では常緑性となって、5m以上になるものがあると書かれています。大きく育つススキは強度がないと倒伏してしまいます。その様なススキは、頑丈で重い素材となります。もちろんオギの生育も、環境の違いで大きく変わります。
萱の密度(重量/体積)
今回、釣具店で入手したもの(上4本)は、皮の部分が剥かれており、値段を考えると茅は中国産のように思います。(下のバラ)は、近所で見つけた萱で、太いものを探すのに苦労しました。穂の部分は、最大の太さで、4mmほどしかありません。そこで、楕円になっている、花穂の下の部分(採取品A)も調べました。
縦横としているのは、断面が楕円になっているためです。
楕円の面積 S=πab(a=縦の半径、b=横の半径) バルサは、角材です。
左側、採取した国産の萱(採取品B)は、中綿がきめ細かく、外部組織が薄くなっています。右の中国産(市販品B)?は、皮が剥かれていても外部組織が厚く、中綿もきめが粗く太い繊維が混じっています。
萱は、採取された場所により、環境や種類が違います。やわらかく軽い中綿と硬く重い外部組織の、割合や質が違っています。これが重さ(密度)の違いになります。
羽の密度
選別された羽は、個体間の差はほとんど無く、部分の違いも0.12~0.15g/cm³となっています。写真の羽は、付け根から15cmくらいの部分で、長径6.6mm、短径6.0mm、長さ70.5mm、重量は、0.325gです。密度を計算すると、0.148g/cm³です。
絞ることで外皮の割合が増し、0.17~0.22g/cm³くらいになります。
市販品Aは、絞ってヘラウキの形状にしました。体積は3.352cm³、重量は0.781g、密度を計算すると、0.233g/cm³です。
茅ウキは、羽ウキと同様、絞って作ります。外組織の割合が増えます。接着してヘラウキにした場合、5割くらい重くなります。サンプルも1.5倍くらいの重量になっています。
市販品Bでヘラウキを作った場合、萱の部分の密度は、0.45g/cm³となるでしょう。杉が0.5g/cm³くらいなので、大差ない重さとなります。
Bodyが重くなるため、出来上がるヘラウキの比重も大きくなります。
比重と動き
バランス(軌跡)は、ヘラウキの動きの要素、「方向転換」、「移動」、「立ち上がり」が、どの程度容易であるか、スムーズであるかで変化します。比重は、移動の動きに関係します。
水槽実験の結果を見ると、ヘラウキの動きは、比重が大きくなるに連れて、動き方がFタイプからSタイプへ、立ち上がりのタイミング(立つときの水面と道糸の角度)が早く(小さく)なることが解かります。
萱でウキを作った場合、最軽量の物でも、羽よりは重くなります。重たい茅を使うと、かなりの差が出てしまいます。
設計表の数値から想像すると、以下のことが言えそうです。
重い萱(市販品Bなど)
Bodyは羽の二倍以上も重いので、比重は小さくなりません。
実質浮力は小さくなるため、適正なTop長は短くなります。
立ち上げる余力が小さいため、重いTopは付けられません。
方向転換の動きに大きな影響はなさそうですが、移動の動きは、鈍くなります。
早いタイミングで立ち上がるため、なじみ動作は長く遅くなります。
Fタイプの動き方をさせることは、出来ません。
軽い萱
Bodyの形状や塗り方を工夫すれば、羽ウキに近い比重に出来ます。Fタイプの動きをするウキも、問題なく作ることが可能です。但し、小さなサイズは、無理があるようです。
重いヘラウキ
比重の大きなヘラウキ、重いヘラウキは、悪いヘラウキではありません。なじむ距離が長く、遅いなじみ動作をするヘラウキは、魚が薄い釣り場や、食い渋りの時など、重宝する場面は多いのです。
羽ウキは、Topと足重量の増加で重くなっています。ゆっくりした動きを演出するために、意図的に重くしたヘラウキです。
軽い素材は、作り手の意図で、どの様にもできます。しかし、重い素材は、ワンパターンのヘラウキしかできません。これが問題です。
萱ウキ製作の第一歩
羽と同様、素材の選別が最初の仕事です。
萱は、育った環境で大きな差がでるため、外観だけでなく、密度を計ることが重要です。
軽い萱のサイズを揃えるには、色々なところから入手することが必要です。昔からの釣具店を見て回ったり、あちこちで採取したりすることです。
次回、理想的な材料を使う前提で設計表を作ります。
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