バランスの調整方法 [ヘラウキのまとめ]
ヘラウキの動き方や、立ち上がり~なじみ時間は、錘や餌の軌跡に対応します。バランスを合わせることは、軌跡を思惑通りにすることだと言えます。
バランス調整には、三段階のレベルがあります。「使えるレベル」、「動きを大まかにコントロールする」、「思惑通りに動かす」です。
レベル1 使える
立ち上がりで、もたつかず、肩が大きく出ることが無い。最低限必要なレベルです。 軌跡では、立ち上がり始めを、65~75度(水面と道糸の作る角度)くらいにすることが要求されます。
これまで、紹介した方法は、過去のデーターと、経験や勘を頼りにしたものでした。そうした大雑把でない、確度の高いバランス調整法が必要です。
レベル2 動きを大まかにコントロールする
レベル2の達成は、立ち上がりのタイミングに加え、動きのタイプのコントロールが、ある程度のレベルで出来ることです。Bodyの形状とTopの選択など、ヘラウキのデザイン全体を考える事が必要になります。錘や餌が、どの様な軌跡を描いくのか、イメージが出来ないとできません。
具体的には、設計表を作成し、その内容を判断して、細かな調整を行うことです。
レベル3 思惑通りに動かす
試作品のフィールドテストと、製作時のデーターを基に、イメージどおりの軌跡を描くようにすることです。細かなデーターを読み解き、適切な対応することが求められます。作ったヘラウキの設計を修正することが作業の中身になります。
レベル3を完全に実現するためには、神業に近い技量も求められます。
レベル1の達成、新しいバランス調整方法
レベル1の整理Bodyの形と寸法が決まった場合、Topと足の長さを決めることが、バランスを調整することになります。
立ち上がるときの、ヘラウキに加わる力は、梃子のようで、支点を支えるのはBodyの浮力です。
足重量のモーメントは、足浮力と打ち消しあうため、実質は半分になる。
Bodyの浮力と重量は決定済みのため、Topの表面張力モーメントが一番大きな要素です。
表面張力は、Topの長さの二乗と係数で決まります。その為、Topの長さを適正な値にすることが、最も大きな問題になります。
立ちのタイミングは、比重など色々な要素が絡みます。「Topを短くすれば早くなる」、「長くすれば遅くなる」という傾向はありますが、単純なものではありません。
ここで、前回示したグラフが大きな意味を持ちます。
ヘラウキの最新データーは、これまで作ってきたヘラウキの集大成で、フィールドテスト、製作データー、水槽試験に裏付けられています。その結果から、Top長の適正値は、浮力に比例することが解かりました。
グラフから読み取るのでなく、設計表を検討して、具体的な結論を導きました。
Top長の関数は、Top長をL(mm)、浮力をF(g)として、
1.0mmテーパーPC L=74F+22
1.2mmテーパーPC L=72F+20
極細パイプ L=70F+19
細パイプ L=68F+18
中細パイプ L=66F+17
カンザシLTop L=112F+36
スタンダードLTop L=88F+28
この結論は、基本的に、Bodyの素材は、関係有りません。発泡素材、カヤ、バルサ、なんにでも使えます。また、Bodyの形状も、その結果を大きく変化させるものではありません。
浮力の計算
浮力の計算は、体積を求めることです。羽浮子の場合、設計どおりに作れるようにするため、型紙を基に浮力計算をする必要がありました。他の素材の場合は、採寸して計算します。正確でなくとも、充分信頼できる程度の近似値を求めます。
ヘラウキ(緑の輪郭)は、円錐と円柱、円錐台の結合した形と考え、それぞれ別々に計算して、その値を合計します。
体積を求める数式
円錐が「V=1/3πr²h」、円柱は「V=πr²」、円錐台は「V=1/3π(r₁²+r₁r₂+r₂²)h」となっています。
羽や萱では、絞る前の長さを「l」とすると、円錐は「h₁=√(l²-r₁²)」、円錐台は「h₃=√{l²-(r₁-r₂)}」です。
a=(1/3)(h/l)とすると、
円錐、円錐台の数式は、「V₁=a₁πr₁²l₁」、「V₃=a₂π(r₁²+r₁r₂+r₂²)l₃」と表せます。
膨らみを持たせて絞る場合は、係数「a」の値を変化させて対応します。係数を調整すれば、ほとんどの形で浮力の計算ができます。正確でなくとも、充分に使える近似値を求める事ができます。
ピンクの形状では、a₁=0.33 a₂=0.35くらいです。
他の要素の確認
他に、レベル1の達成には、「立ち上がりの軸」と「水面の姿勢」を確認します。
立ち上がりの軸の位置
「Top長/Body長」は、1.1以下になると、立ち上がりの軸がBody側にズレ、肩が出やすくなります。
「Topの剛性が足らない」などは、立ち上がりの軸がTop側にズレ、沈み込んでから立ち上がる様になります。0.8PCで240mm、1.0PCで300mmが目安です。
浮いている姿勢
水面での姿勢は、回転や移動の動きにも影響しますが、「Top重量<足重量」となっていれば、大丈夫な場合が多いようです。
限界
新しいバランスの調整方法は、浮力を計算し、Top長を決める。確認事項に問題が無ければ、レベル1をクリヤーする。
この方法は、高い確立で、成功すると思いますが、100%ではありません。ヘラウキには、様々な力が加わり単純ではないのです。限界があるのは当然です。
レベル2をある程度達成することが必要になります。レベル2のツールである設計表を修正をし、
今回のバランス調整方法を生かせる様にしようと思います。
次回より、カヤウキを作ります。
コメント 0