金継ぎの竿掛け [釣り具の製作]
リフォーム
10年くらい前に作った竿掛け、栽培竹の、半製品を購入して作ったものだ。最近、乾漆の装飾部分が、傷んできたので、リフォームすることにした。超極細の藤を使い、網代巻にすることにした。
この竿掛けは、竹の組織がしっかりしていて、柔らかいが腰が強い。カーボン12尺くらいまでが、乗せられる。小節で、美しい、優等生の竹なので、高級な材料を使い、オーソドックスな手法を選んだ。
天然であれ、栽培であれ、良い竹は、完成品にする。2番手は、半製品、3番手は、火入れ済、最後は、原竹のままである。良いものは、コストを掛け、高く売る。残念な物は、手間を省き、易く売りさばく。これが、普通の考え方。良い竹が欲しいなら、完成品や、半製品を、信用のおける店で選ぶ。掘り出し物は、見つからないと、思った方が良い。
今回の主役は、この竹、節目が深く凹み、普通には、節抜きも出来ない。竹の組織が、スカスカで、ごみ箱に入ってもおかしくない。
しかし、1.4m位で、13節、小節で、節間のバランスも良い。ポコポコした形は、面白みが有る。
このような竹は、良し悪しでなく、面白いかどうかで、評価すべき。「銘品」は、出来ないが、「へうげもの」が、出来る。
13節のうち、8節が、この様な状態、アイデアが必要である。
この竹は、元から5節目に、皺が寄っていたので、その部分で切り、1本半の竿掛けにすることにした。
節を抜く為、凹み部分を、ルーターと彫刻刀で、切り取った。
節抜きは、ドリルを使ったアタッチメント、直進性が高く、抜けた直後で、暴れにくい。節と節の間は、回転を止めて、移動させ、節だけを、抜いていった。
節が抜けても、穴の中は、凸凹の状態、毛虫ヤスリで削った。
先端側は、元に向かって、細くなるテーパーに削る。節間の長い、密度の高い竹を、2節目まで、差し込み、エポキシ接着剤で、固定した。また、竹と竹の段差は、木屑エポキシで埋めた。
竿掛けの竹は、急テーパーになっている。一本では、間に合わないので、元の側からは、込みを合わせ、接着した竹を、差し込むことにした。
先端の竹と、元側の竹は、20mmくらい、込みを合わせて、接着している。元竹も同様に加工して、追い継ぎにした。
ここまでの工程、込み合わせなど、竹の内部を、削る工程が多い。しかし、毛虫ヤスリが、良く働いてくれたので、思いの外速く加工できた。
下が1本半、上は、10節1本物、よく似た竹なので、同時進行している。
節目の凹みは、銘木の端切れや、色の濃い紋竹を、象嵌する。
全ての節目が、完成したら、込みの部分に、節出しで、黒の絹糸を巻き、下塗りにウレタン塗料を塗った。
嵌めた銘木の周りは、竹の形状から、凹みになっている。ルーターで削り、輪郭を整え、木屑漆を詰める。乾燥後、黒を塗り、その上に、金を塗る。研いだ時、黒が、見え隠れする。
元の部分に、浅い、小さな、亀裂が有る。ここにも金を入れる。また、巻糸の端に、金を入れる。
これで、全体に、金継ぎを、施した様になった。
この竿掛けには、前回登場の、金継ぎの万力を合わせた。
ゴミ寸前から、「へうげもの」の、セットが誕生した。
戦国の昔、ヘラブナ釣りは、存在していない。古田織部は、喜ぶだろうか?
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