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焼印の作り方、使い方、etc [焼印の作り方]

 焼刻印

 「焼刻印」は私の造語です。枠無しの焼印を作り、通常より接触面を鋭く刻みます。焼印を入れるより低温で、竹や木材に強く押し当てます。僅かに焦げて、木や竹に刃物で彫り込んだ様な窪みができます。そこに漆などを入れ、銘を際だたせます。色の濃い部材に銘を入れるには、都合の良い物です。もちろん、「焼刻印」は通常の焼印としても使えます。
    

 字体とサイズ

字体辞典などを参考にして、字体を決めます。深く刻めることが問題なので、ペン字体や草書などをベースに考えます。また、画数の多い場合、接触圧が小さくなり巧く刻めない場合が出てきます。その為、平仮名や片仮名にする事も考えてください。文字のサイズは、竹に入れる場合4~6mmくらい、平らな木材なら6~8mmくらいが打ちやすいと思います。
    

焼印の工程

草書の線を細くした字体を選択しました。裏文字を方眼紙に書いて手本にします。
     

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 手本と補助線を見ながら、ケガキを入れます。枠が無いので、字の周りはルーターを使って削ります。周りは、1mm以上の深さに掘り下げます。写真の形のビットが使いやすいと思います。
     
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粗彫りが終わったところで、800番で磨きを掛けました。線が細くなるように、仕上げ彫りをします。
     
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仕上がったところで、スタンプをしました。通常の焼印なら、これで充分ですが、焼刻印は、ここから文字の接触面を尖らせていきます。
     
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尖らせたので、スタンプをすると、左の様になりました。周りをカットして、ハンダゴテに装着出来るように、4mmの真鍮丸棒を付けます。写真には、前回の銭形印が一緒に写っています。接触面の違いが判るでしょうか?
     
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 竹に試し打ちをしました。左が修正前で右が修正後です。上は通常の焼印と同じ温度、下は低温で押しつけ朱漆を流し込んだ物です。下の様にも出来るようにするのが、焼刻印の役割です。 

 修正点は、「暇の縦の棒が食い込んでいない」、「人の上の部分が同様、人の繋がり部分がハッキリしていない」また、「線が全体に太すぎるため、食い込みが悪くなっている」などです。修正の結果、より軽い力で食い込む様になり、溝の深さや、竹に食い込む角度も良くなりました。字の輪郭がシャープになっています。
     
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 完成

 焼刻印は、押印した部分が、刃物で削ったような状態になるように、修正を繰り返し完成させます。

          

銘木に焼刻印

柘植、パドック、ウェンジュ、という硬い銘木に、低温と高温で押してみました。竹ほどには焦げてきませんが、温度が高すぎると、薄い色の材木では「焦げ」が目立ってきます。低温でもある程度刻み込めています。

     
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漆を流し込むとこんな感じです。目止めがされていないので、周りに入ってしまいました。低温でも充分凹んで入るのは解ります。焦げた部分は、パドックとウェンジュでは、ペーパーで少し削っただけで取れました。しかし、薄い色の柘植では巧く取れていません。焼印はやり直せないため、切れ端で、どの様になるのか試すのが安全なようです。

     
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 烙印の修正法

 焼印で付けた印を烙印と言います。焼刻印の烙印は、少しの失敗なら修正ができます。写真の物は、人の一部が二重になりました。切り出しで引っ掻くように修正します。焼かれているので、竹の表面はもろくなっています。力を入れすぎないようにするのがコツです。
     
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焼印の話

 焼印は、用途などを考えると、三つのタイプに区別出来ます。
 1は、平面に押す物です。木工品や、和菓子、饅頭などの食品に使われる場合、高温で短時間押して、焦げ目をつけます。レザークラフトでは、低温で少し長い時間押し続けます。これは凹みと薄い焼き色を付けるのが目的です。このタイプの焼印は、速く温度が上がるように、板状になっています。竹などの丸い物では、滑って失敗が多くなります。
     

 2は、丸い物に押せる焼き印です。焼いた時に、素材に食いつき、滑らないようになっています。焼いて食い込むと丁度良い字体が浮き出ます。竹竿や竿掛けなどはこのタイプの焼印です。食い込ませて回し押しするため、適温があります。温度の上がり下がりが、急激にならないように、焼印は金属の塊になっています。
     

 3は、今回紹介した焼刻印です。刃物で彫ったような凹みを付けるのが目的です
     
 焼印の押し方

 平面に押すのと違い、丸い竹に押すときに、失敗は付き物になります。しかし、やり方に因っては失敗を減らすことが出来ます。

 温度管理

 一旦温度を上げた後、プラグを抜いて印の温度を下げていきます。適当な温度で有ることを確認するため、何度も試し押しします。真鍮は比熱が大きいため、直ぐには冷めません。適温になったところで4~5本は入れられます。40wのハンダゴテでも温度は急上昇します。押すときは、プラグを抜くのが基本です。

押す

 SPFの端材に釘を交差させて打ち込んで焼印台にします。右手でハンダゴテを持ち、焼印の根元を乗せて安定させます。横から印面を確認しながら、左手で竹を押し当てます。本番前に、上下左右に食い込む感覚が、解るようになるまで練習するのが大事です。
     
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 メンテナンス

竹の油などが焦げ付くと、巧く押せなくなります。温度を上げて付着物を炭化させた後、真鍮のワイヤーブラシで擦り取り除きます。この方法で大抵は大丈夫ですが、取れないときは、細い鉄のワイヤーブラシを使います。

     
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焼印の購入

焼印を扱うサイトは多くあります。メーカーや作者により、製作方法や、焼印の素材が違います。どのタイプの焼印を作っているか、確認する必要が有ります。
     

注文するときには、用途、サイズ、デザインを考えます。押す物により、印面の形状が変わります。

サイズは、竹の場合、直径より横幅の大きな印は失敗しやすくなります。縦の長さも長すぎると失敗が多くなります。小さすぎる焼印は、丸焼け状態になりやすくなります。
     

デザインの制約があります。1のタイプは、ゴム印などと同じなのでデザインの制約が余り有りません。2と3は字体や枠など、デザインが原因で巧く押せない場合が出てきます。太い線が多い字体や画数が多く線が混み合う物は難しくなります。
     

 お知らせ

 ヒラタクラフト工房では、送料込み、1万円で製作致しております。プロフィールにアドレスが載っていますので、ご希望の方はメールにてお問い合わせ下さい。

 使用する素材は、真鍮の塊で、手彫りです。4mmの丸棒を取り付けてあるので、一般的な40wのハンダゴテに装着して使えます。印材は、10×10mm、15×15mm、10×20mmの3種類を用意しています。

     

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     P5230002.jpg
     

手彫り故、漢字は3文字まで、仮名は5文字までです。文字の最小サイズは3mm×3mmくらいが目安ですが、字体や画数によってはもっと小さなサイズも可能です。写真は、左から「昇作」4×4mm角印(篆書体)、「暇人工房」9mm銭形印(行書体)、「昇作」5×10mm普通印(篆書体)です。

     
     P5230001.jpg
     

この中で4mmの角印は温度管理が非常に難しく、常に丸焼けの危険をはらんでいます。この辺りのサイズが、焼印としては、使える最小サイズと考えています。
     

 今回、紹介した焼刻印も注文できます。 


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田吾作

私にはとてもできないあらゆる物作りに精通しておみえで
感心しまくりです。
本当にすごいですね!
by 田吾作 (2009-06-15 09:37) 

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